何をすれば貴方は喜ぶの?
何をすれば嬉しいの?
オレ、馬鹿だから分からないよ。
言ってくれよ・・・。




捻くれ者




昨夜、風呂上りで何も着ないで寝ていたせいか朝は肌寒くて眼が覚めた。
それだけでなく、昨夜は同じ布団で寝ていた角都の姿がいつの間にかなくなっているから余計に寒さを感じたのだと思った。
角都は大体朝早くから換金所へ行ったり、簡単に金を稼ぎに出掛けたりする。
俺が気持ち良さそうに寝ているから、敢えて起こさないのか、朝は大抵俺の前にいない。
寒いとぼやいても、腹が減ったと主張しても乱暴に殴りつけてくれる角都は居ない。況してや、寂しいと甘える事が出来ない。

あの逞しい角都の背中に抱きつきたい。
あの腕で抱きしめられたい。

そんな風に思っても部屋には俺一人だけ。
部屋の中で一人天井を眺めて暇だ、と呟いてみる。胸の怪しい形のペンダントを握り締めて、角都と呟く。
いつも角都が居ない時は決まってこんなかんじなのだ。学習能力が無い故に、角都を待つことしか出来ない、そんな感じ。
飛段は、脱ぎ捨ててある衣服を気だるそうに引き寄せ、ゆっくりと、下だけ穿いた。
無風の部屋の中でも上半身裸であると寒かった。些か外の空気を吸いに行きたかったが、いつの間にか布団を引き寄せて潜ってしまう。

「・・・・・・・・・・・・」

角都の匂いがした。顔をうずめて昨夜の行為を思い出す。
今は自分の近くにはいない。自分の見えないところで行動をしている。
何処かへ行くなら、自分が必要の無い用事ならせめて一言欲しいものだった。
角都は知っている筈。自分がどれだけ寂しがり屋かを。それなのに角都は大切なお金の為に俺を放っておいて何処かに行ってしまう。
帰ってくる時間は日々違うが、最近は日が落ちてから帰ってくることが多くなってきた。
場所さえ分かれば、何処にだって探しに行くのに、その場所さえも分かりやしない。

こんなにも想っているのに。
こんなにも好きなのに。
切なくて苦しくて・・・・?
それでも貴方は分かってくれない。


お金の方が相棒よりも大切なのか。
でも、仕方ないか。本当に必要なんだろうから。

角都はお金が自分の手元にくれば喜ぶ。どこかにやってしまえば許さない。
だから俺は角都が喜んでくれるように努力するんだ。
微かな笑みでもいいから俺に向けてよ。



飛段は、服の中からお金を取り出すと、静かに布団の上に置いた。
今まで黙って貯めてきたお金。これくらいでいいのかな。いや、もっと欲しいのかな。
沢山あったら、角都が喜んでくれる。
そうやって角都の好きなお金を集めるために俺は角都が帰ってこない間はふらふらと出かけてゆく。
行き先は、決まっていた。
飛段は暁の服を手に取った。










今日はいつもより少し寒く感じられた。
換金所へ行く途中、何度か飛段の震えている姿を思い出して顔を顰(しか)めたり、微笑したりしてしまった。
朝早く起きると昨夜のことで疲れきった顔で寝ている飛段、何も着ずに寝ていたせいか冷え切った朝方は布団を独り占めしていた。
そんな飛段を可愛く思えてどうしようかと、それでも理性を抑えて、静かに部屋を去る。
何か言っておけばいいかな、と毎日考えるのは考えるのだが、例えば行き先を告げたところで飛段を連れて行くのははっきりいって邪魔になるのだった。
文句ばっかり聞いてはいられない。だから心の中では謝っておく。
暇だとぼやいている飛段が眼に浮かんだ。まだ、裸で居るのか。

角都は今日も日が落ちたころ帰ってきた。ドアの前で、心配してやる一言を考えてドアノブに手を掛けた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

部屋は真っ暗だった。
もう寝たのか、と溜息を吐きながら電気をつけたが、どこにも飛段の姿が無い。
いつもならば、どこかに出掛けても自分が帰ってくる前にはごろんと布団の上で待っている筈なのに。
別に待っていて欲しいとかではなくて、ただ自分が帰ってきたときにはいつも同じ場所に居て欲しい。その方が安心してしまう。
角都は溜息を吐きながら、何処へ行ったのだとアタッシュケースを投げ捨て、布団の上に乱暴に座った。
自分も行き先を告げずに出掛けてしまうから言えた事じゃないとは分かっている。でも、飛段は駄目なのだ。
いらいらしながら、布団の上に手を付くと、何か音がした。
そのまま手探りで調べてみると紛れもなく、それはお金だった。
しかも結構な量がある。手にとって首を傾げた。
いつ、誰が、こんなお金を。誰が、には金から程遠い相棒の名前は浮かばなかった。
角都は胡坐を掻きながら丁寧にお金を何度か数えなおして、並べてみる。
誰が置いていったのかも分からないそれをアタッシュケースに詰め込もうとしたその時。

「やっぱァ、帰ってた・・・・」

後ろでドアがガチャリと開いた。
角都はアタッシュケースと金を一度、手で除けて飛段に向き直る。
遅かったな、と一言言ってやろうと思ったのだが、声が出てこなかった。
飛段は床にがくりと崩れ落ちると、だらしなく垂れ下がった前髪を手で押えて、みっともなく肌蹴た服をも押えた。
何故だか顔がべたべたしていて気持ち悪い。というか体中が。
これは角都に怒られるかな?殴られて蹴っ飛ばされて・・・・理由を知られたら嫌われるのかな。

俺は掠れの混じった声で情けなく角都の名前を呼ぶ。
角都が此方に近寄ってきた。角都の背後に自分が置いていった金が散らばっている。
角都がまず始めにそれについて言わないのは、勝手に湧き出てきたとでも想っているのだろうか。
喜んでくれると期待して、損すると分かっていてもやっぱり期待してしまった。
角都の腕が伸びてきた。

「っ・・痛ぇ・・・・」

やっぱり殴られた。
痛みを感じたのだが、体があまりにもだるすぎてよく分からなくなってきた。

「・・・・・・・・」

角都は何も言わずにもう一度殴りつけてきた。”何処へ行っていた”そう言っているのと同じ。
俺は怖い眼をして再び殴りつけてこようとする角都にゆっくりと、服の中から取り出した金を突き出す。
角都の眼が細まった。殴る手も下ろされる。

「何だこの金は・・・・・・」

なんだと言われてもどういう風に答えてよいか分からない。
俺は取り出した金を角都の手元に置いて、起き上がると、黙って次の言葉を待った。
角都はマスクの中で溜息を漏らし、面倒そうに呟く。

「・・・・どうした・・・・この金」

この金と・・・・そう言いながら、先ほどしっかりと自分の物にしようとしていた金を指差して俺を見つめる。

「え・・・えと・・・それはなぁ・・・その」

”体使って稼いだんだぜ”なんて言ったらすぐに何の事かばれて、見放される気がした。
口ごもる飛段を他所に角都は早く言えと促す。


「わかったって・・・・」そう言うしかなかった。

髪をかき上げ、上目遣いで角都を見ると、渋々口を開く。

「か・・・角都が金、欲しいっていうからよぉ・・・稼いできたんだ」
「何で」
「俺、角都の喜ぶところが見たくて・・・つい・・・」

俺は服を脱いで、体を角都の眼前に曝け出す。
風呂に入ってこなかった為、体は汗と、誰のかも分からない精液で汚れっぱなしだった。
顔に気持ち悪い感触を感じたのは、顔射されたからだろうか。
慌てて顔を拭おうとすると、その腕を角都に掴まれた。

「何時から・・・そんな事をしている」
「な・・・なんでそんな怒ってんだよ」
「俺以外に、そんなことをしても良いと思っているのか?」

嫉妬してくれているのか、と驚きも嬉しく思い、角都に抱きつこうとすると、またしても殴られた。
そして無理矢理押し倒され、マスクを下ろした角都にキスをされる。
痛いほど腕を押さえつけられて、逃げようとすると、角都の腕から伸びた触手に四肢を押えつけられた。
動けない状態で俺は角都に首を掴まれ、もう一度、良いと思っているのか?と問われた。
勿論、大袈裟首を横に振りたかったのだが、掴まれているため、搾り出すような声で、思ってないと言うしかなかった。

「・・・じゃぁ、これはなんなんだ?」

服を剥ぎ取られて穢れた体を晒される。

「金・・稼ぐ方法・・・これしか思いつかなかったんだよォ・・・いてぇよ・・・」
「これで俺が喜ぶとでも?」

低く、冷たい声で俺の好意を踏み躙る。
腕が重みに悲鳴をあげている。

「俺・・・馬鹿だから、金がこれで角都が喜ぶほどに足りてるなんてわからねぇし・・・」
「お前は馬鹿か」
「だからァ、今そうやって言ったじゃねぇか!」
「何で俺が好きな金を貰って怒るんだ」
「・・・・・は?」

それを俺が聞きてぇよ!と飛段は膨れた顔で痺れてきた腕の先を見つめる。

「・・・・なんで俺が怒ってるかも分からないとんでもない馬鹿なのか?お前は」
「馬鹿馬鹿いいやがって・・・!分からねぇもんはわかんねぇの!」
「・・・・・・・ハァ」
「なっ・・!溜息なんかつきやがっ・・・・・」

角都は面倒臭そうに、飛段の顔を見つめると、喚き立てるその口をもう一度口付で塞がれる。
乱暴なキスも飛段にとっては心地よいもの。
うっとりして眼を細めていると、腕の重みがひいた。どうやら角都は解放してくれた様。
腕が解放されて地味に痛む行為は終わったのだが、まだ触手が体から離れない。

「・・・・・・っふ・・・ぁ」

口腔を犯されて体の力がすっと抜ける。細めた眼で角都を見ると、見下すような目つきで見下ろされた。
いつもとあまり変らない様にも見える表情だが、いつもより、怒っている感じ。
面白い事に、キスだけは優しかった。
角都はもしかして

「な・・・なぁ、角都ゥ・・・もしかして俺が他の奴とヤったのに嫉妬して「黙れ」
「・・・・・・・・」
「悪いか」

怒ってはいるが、穏やかになっている口調に驚き、その上嫉妬してくれているだなんて物凄い気分が上がってくる。

「角都最高!マジ大好きだからよぉ・・・他の奴ともうヤんねぇから」
「・・・・・・・・・あぁ」

角都は気分が上がりすぎの飛段に呆れて、触手を外してやると、何事も無かったかのように飛段の稼いで来た金を詰め始める。
飛段はだるそうに起き上がり、角都の後ろから抱きつく。勿論、邪魔者扱いでどけられた。
まだ怒っているのだろうか。

「・・・・・飛段」

しょぼくれて天井を見上げる所に突然、名を呼ばれるものだから、首を傾げて角都のことを瞬きせずに見つめると、はっきりいって面倒臭そうに手招きをしてきた。
飛段は顔を輝かせて、凄い勢いで飛んでゆく。あまりにも勢いが良くて殴り飛ばされるかと思ったのだが、予想外。

「・・・・・・か・・角都?」

飛段は角都の腕の中にいる。
凄い嬉しくて仕方ないのだが言葉が出て来ない。

「・・・・今度。勝手に抱かれたりしたら・・・殺す」
「・・・ゲハハハァ・・・だからそれをオレに言うかよ。角都」

相変わらず、金から手を離さない角都に自分から深い口付を食らわす。
顔を引いたとき、角都が少し微笑んだようにも見えた。


素直じゃない貴方だけれども、愛してるなんて言ってくれない貴方だけれども、それでもオレは・・・・・・・

貴方を 愛してる。




FIN


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一年前くらいの読み物でした。
読み直してないので変な文章あるかもしれない。

角都がツンツン…デレ?みたいになった話だと思われww
飛段は決してビッチじゃあない。

二人とも不器用なんだ。





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